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Research

国際的な研究課題であるマラリアに対して、

薬剤やワクチンを含めた新しい治療法の開発を目的としたマラリア学の研究を行っています。

マラリア原虫は哺乳類と蚊の間で感染するという生活環を有しますが、原虫が寄生部位ごとに変異するため、複数の治療標的が存在します。本講座では、赤血球に入る前の肝細胞期を標的とする発病予防(Richard Culleton)、赤血球期を標的とした薬剤やワクチン開発(矢幡 一英)、蚊体内の原虫を標的とする伝搬阻止の薬剤やワクチン開発(橘 真由美)に焦点を当てた研究に取り組んでいます。

私たちは、講座内だけでなく国内外の多数の研究者と共同し、最新の分子生物学や画像解析法、遺伝学、ゲノミクスの手法を組み合わせており、ベンチワークを主体とした分子生物学的研究とフィールドワークを主体としたマラリア流行地における遺伝疫学的研究の2つに分けられます。

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01

遺伝的連鎖解析を用いたマラリアワクチン候補抗原の同定

私たちは、新しいワクチンターゲットとなるマラリア原虫抗原を特定するために、マラリア原虫を使った連鎖解析法(Linkage Group Selection, LGS)を用いています。LGSは、表現型が異なる2つの株を用いて遺伝的交配を行い、その表現型の違いを示す遺伝子を探索する方法です。

 Culletonらはこれまで、LGSをマラリア原虫の免疫研究に応用する手法を開発しました (Abkallo HMら、PLoS Pathog 2017)(図1)。その手法は、マウスにマラリア原虫株を感染させ、原虫株特有の免疫反応をマウスに誘導させます。その後、表現型の異なる2種類のマラリア原虫を同じハマダラ蚊に感染させ、蚊の体内で2種類のマラリア原虫の遺伝子が組み変わった原虫を得ます。免疫したマウスにそのマラリア原虫株を感染させることによって、原虫株間で免疫反応の異なる遺伝子領域を絞り込み、さらに原虫抗原をコードする遺伝子を検出します。その後、これらの候補抗原は標準的な逆遺伝的手法を用いて詳細に調べらることができます。これまで、この遺伝学的手法を赤血球期の原虫に適用していましたが(図1)、現在は肝細胞期の原虫抗原を見出すために用いています。新たに解析が進んだマラリア原虫 (Plasmodium vinckei) の系統 (Ramaprasad A et al. BMC Biol 2021) を対象に、肝細胞期原虫に認められる株特異的な免疫反応をIVIS画像解析法(図2)とLGS解析法で研究を進めています。

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02

​流行地を基盤とした
マラリアの分子疫学

実験室を中心にした研究に加え、世界各地のマラリア流行国での疫学研究にも取り組んでいます。

 アフリカにおいては、Culletonらが熱帯マラリアの薬剤耐性の発生と拡大に関する研究を行い (Nundu SSら、Parasitol Int. 2022)、また、重要であるにも関わらず​研究が進んでいない四日熱マラリアと卵形マラリアの疫学研究 (Abdulraheem MAら、Int J Parasitol)を実施しています。

 ブラジルとマレーシアのボルネオ島では、霊長類のマラリア原虫であるPlasmodium simium (Mourier Tら、BMC Biol 2021)とPlasmodium knowlesi (Bin Said Iら、Parasit Vector 2022)について研究をおこなっています

 タイでは、橘がタイの研究機関と共同で三日熱マラリアの蚊ステージ原虫の先導的研究を行っています。

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03

マラリア原虫有性生殖の分子基盤の解明
及び伝搬阻止ワクチン候補抗原の探索

蚊の中での有性生殖は、マラリア原虫のヒトからヒトへの伝搬に不可欠です。マラリア原虫の複雑なライフサイクルの大部分は無性生殖による分裂増殖を繰り返しますが、宿主から蚊へ取り込まれるわずかな期間のみ有性生殖をおこないます。

 マラリア原虫の受精に関わる分子メカニズムは、未だ明らかとなっておらず、逆遺伝学的手法、タンパク質間相互作用の解析により、その解明に取り組んでいます。また、これらのステージの原虫表面に発現している分子は、蚊から宿主への伝搬を遮断する「伝搬阻止ワクチン」の標的抗原として注目されており、このワクチンの新たな候補抗原の探索にも力を注いでいます(図3)。

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04

マラリア原虫の赤血球侵入機構の解明

マラリアの病原体であるマラリア原虫はヒトの赤血球内に寄生し、発熱や貧血、脾腫といった症状を引き起こします。マラリア原虫がどのように赤血球を認識し、侵入しているのかという分子メカニズムを理解することは、ヒトにとって致命的ともなるマラリア症状の緩和や、更には、マラリア原虫のヒトへの感染を排除するためには重要なテーマですが、そのメカニズムは非常に複雑で未だ完全に解明されていません。

​ マラリア原虫が滑走運動しながら赤血球に侵入していることを発見したことから (Yahata K et al. PNAS 2021)、滑走運動に関わるマラリア原虫分子と相互作用する宿主分子の同定など、マラリア原虫の赤血球侵入の分子機構を包括的に解明し、新規薬剤やワクチン開発を目指しています(図4)。

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​©️Molecular parasitology, PROS, Ehime Univ. All Rights Reserved.

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